美しくなるために知る栄養学2014年11月29日
美しくなるために「栄養」について知る。
気になる体型の維持やダイエットのために、ついつい無理をした食事によりリバウンドしたり、体調を崩した経験をされる方は多いはず。
巷には様々なダイエット法が存在しますが、栄養管理を怠ると大変なことに。
そこで、管理栄養士で博士の林史和先生に栄養学から考察する美しい体型の定義や正しい食事方法など、様々な切り口から3回に渡り「美しくなるための栄養学」ということでご執筆いただきました。
栄養状態を評価する方法で、最も一般的なのが体格指数であるボディ・マス・インデックス(BMI)です。BMIは体重(kg)/身長(m)2で計算します、。身長に対する適正体重を評価・判定する基準として世界中で広く採用されています。判定基準は、日本肥満学会により、日本人は18.5未満がやせ、25.0以上は肥満であるとされています。また、逆にその人の標準的な体重を知りたければ、身長に22をかければ計算できます。
美人と体型について。
「美」の基準は、時代や、環境により変化してきました。たとえば、ヨーロッパを例に取ると、古代ギリシア/ローマ神話に登場する愛と美の女神アフロディーテ/ヴィーナスは、多くの芸術家たちにより、「美の象徴」として、作品のモチーフとされてきました。そのため、各々の時代のヴィーナスを追うことによって、当時の人々がどのような体型の女性を、「美人」と呼んでいたのかが推察できます。「ミロのヴィーナス」などの作品のヴィーナスは、それぞれ程度の違いはあれ、大体の場合、ふくよかな体型であり、古代~少なくとも近世までのヨーロッパでは、現代の基準における、ふくよかな体型が美しいとされてきたと考えられます。現代では、体型を身長と体重を用いて評価していますが、この指数を、Body Mass Index(BMI)といい、体重(kg)を身長(m)の2乗で除すことで計算できます。
日本人の国民健康調査では、すべての年齢の男性で肥満が多い。女性では年をとると肥満が多くなる。
日本肥満学会が提唱する基準では、日本人では、BMIが25を超えると、肥満と判定されます。過去、美人の定義のひとつであったふくよかさですが、度を過ぎれば、肥満になってしまいます。肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と関連することが分かっています。腹囲の計測で評価する内臓脂肪の蓄積に、生活習慣病が2つ以上合併した状態をメタボリックシンドロームといい、動脈硬化や脳卒中の原因となるため、注意が必要です。
美と健康のバランスのとれた体型を目指しましょう。
しかし、現代では、巷でのダイエットの流行に見られるように、「細い=美しい」というような風潮があります。これを示すように、平成24年度国民健康栄養調査の結果を見ると、20代~30代の女性の2割程度は、やせていることが分かります(厚生労働省. 平成24年 国民健康・栄養調査)。肥満は、確かに健康を害する原因となりがちですが、やせの場合は問題ないのでしょうか?実は、中高年の日本人のBMIと病気による死亡率をみると、標準的な体型の人と比較して、やせている人のほうが、がん、心疾患、脳血管疾患による死亡のリスクが高いことが報告されています(S Sasazuki et al., Journal of Epidemiology, 2011)。また、近年、若い女性のやせの増加により、出生体重が2,500g未満の「低出生体重児」の割合が増加しているという説もあります。低出生体重児は、大人になってから、メタボリックシンドロームを発症しやすくなる可能性が指摘されています。これらのことから、やせすぎは、自分だけでなく、次の世代にも影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
まとめると、やせすぎも太りすぎも、健康という観点から考えれば、同じく注意しなければなりません。では、健康的な体型とは、どの様なものなのでしょうか?ルネッサンス期の作品である「ヴィーナスの誕生」に描かれたヴィーナスのBMIは、約22であると推定されており、これは、バランスがよく、病気になりにくい体型であるとされています。ですから、美と健康のバランスの取れた体型を目指す際には、このヴィーナスをイメージするとよいでしょう。
文 : 管理栄養士 林 史和 先生